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図3.31 板状小型試験片の引張強さと軸荷重片振り疲労強度の関係30)

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(2)切欠の影響
断面形状が急変する切欠部を持つ部材の疲労強度σwnは、応力集中によって平滑材の疲労強度σwOよりも低くなる。その低下の割合を式(3.14)で表し、切欠係数βという。
β=σwD/σwn(3.14)
切欠係数βは、材質や切欠底近くの応力状態の影響を受ける。一方、応力集中率αは弾性範囲内で意義を持ち、幾何学的に相似な形状の場合には材質や寸法の大小、荷重の大きさとは無関係な値である。アルミニウム合金のαとβの関係は鋼材の場合と類似であり、βはαに比例して大きくなるが、α≒3を超えるとそれほど大きくならない。すなわち、
?@αはβより常に大きい。
?A切欠底の丸み(切欠半径)が大きいか、又は切欠が浅い場合、α≒2程度まではα≒βとみなすのがよい。
?Bαが比較的大きい切欠では、βはαに比してかなり小さい
したがって、設計においてはα≒2を超えると、αの代わりにβを用いることがある。しかし、この範囲になると、式(3.14)における切欠疲労強度σwnは切欠底に停留き裂の存在を許容するσw2である31)から、船舶のように変動荷重や衝撃力を受ける場合には、βよりもαを用いるのがよい。
図3.32と図3.33に主要な船体構造用アルミニウム合金のαとβの関係を示す。質別T4やT6と比べて質別O,H112やH及びT5材はいずれも切欠に敏感なので、設計では前述の?Aよりも多少厳しく、α≒3程度まではα≒βとして取り扱うのが無難である。
なお、詳細を略すが、引張強さと切欠疲労強度の相関32)は、αが大きくなるにつれて低くなる。

 

 

 

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